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淡路島トラベルガイド:陶芸工房、Awabiware、そして島の食

淡路島トラベルガイド:陶芸工房、Awabiware、そして島の食

もし淡路島のことを聞いたことがあるなら、それはおそらく、柔らかな淡路牛や甘い玉ねぎ、美しい砂浜、そして渦潮で知られる鳴門海峡といった、食や自然にまつわることでしょう。しかし、神戸と徳島に挟まれ、大阪からも車ですぐのこの島は、日本の伝統工芸とも深いつながりを持っています。

備前、信楽、九谷といった主要な陶磁器の産地とは異なり、淡路島の陶芸の伝統は、ゆっくりと丁寧な手仕事に根差した、小規模で個人的な営みであり続けてきました。

Awabiwareの工房にて。釉薬をかける前の、棚で乾燥される器たち。

古伊賀焼で使われる島の登り窯に火が入れられるのは、年に一度だけ。これは、瀬戸や有田といった確立された産地での絶え間ない生産とは著しい対照をなしています。この年一回の儀式は、生産性よりも忍耐とプロセスを重んじる、作り手の姿勢を映し出しています。

鶴来窯–神々を祀る小さな祭壇が設けられた6連房の登り窯。

武士の時代の窯に息づく精神から、現代的な陶芸、そして『ファーム・トゥ・テーブル(農園から食卓へ)』の料理に至るまで、淡路島は伝統と革新を静かな調和の中で織りなしています。淡路島の工芸は、少量生産の丁寧な手仕事と、ゆっくりと形作られる粘土の中に息づいています。淡路島でのアクティビティを探している旅人にとって、陶芸体験と食文化は見逃せない魅力です。

海里の田舎寿司–地元の旬の食材を使った伝統的な日本の寿司。

武士の美意識:「古伊賀」の再生

16世紀後半、戦国時代の日本では、茶の湯が政治的・文化的な生活の重要な一部となりました。千利休、織田信長、豊臣秀吉といった茶人や武将たちは、完璧さではなく、不完全さの中に美を見出しました。その哲学は、初期の伊賀焼である素朴な「古伊賀」に反映されています。

主に花器や水差しとして作られた古伊賀は、「わびさび」、つまり静かな簡素さと自然な欠点の美しさという精神を体現しています。ざらざらとした土の質感、炎による焦げ跡、そして窯の中で燃えた薪の灰が溶けて土に付着することで自然に生まれる、柔らかな緑色の艶は、自然と深く結びついた、ありのままで作為のない力強さを表現しています。

淡路伊賀焼の花器–伝統的な窯で高温焼成されることによって生まれる、独特の風合いと自然な不完全さ。

その精神は、数世紀の時を経て、淡路島ので今も燃え続けています。前田幸一氏によって設立されたこの窯元は、古伊賀の伝統を受け継いでいます。日本の焼き物が好きな人なら、ぜひ訪れたい場所です。

1971年に淡路島で生まれた前田氏は、考古学を学び、杉原哲彦教授をはじめとする何人かの師のもとで陶芸を修行しました。20代で故郷に戻り、実家の農地に窯を築き始めましたが、その大きさから、地元の人々は最初は倉庫と見間違えたほどでした。

日本の伝統的な窯の構造と焼成について説明する前田さん。

1996年までに、彼は6つの焼成室が連なる大きな登り窯「六段登り窯」を完成させました。1998年以来、窯に火を入れるのは年に一度だけ。毎年2月、4日4晩にわたり、強い火力を生む樹脂を多く含む手割りの赤松が絶え間なくくべられます。窯の温度は1,400℃にも達し、溶けた灰や炎の跡が、予測不能な模様を生み出します。

伝統的な窯焚きのために、手で割った赤松を準備する前田さん。

「待つ」という仕事は、窯焚きよりもずっと前から始まっています。山から掘り出した土を、石や鉱物ごと手作業で練り合わせます。そして雨や日差し、あるいは霜に晒し、数年、時には十年もの歳月をかけて野外でじっくりと土を熟成させるのです。釉薬は一切施しません。焼き上がりを決めるのは、ただ窯の炎のみです。

前田さんの指導のもと、淡路伊賀焼の作陶を体験する筆者

鶴来窯では、前田さんの指導のもとでに参加することができます。例えば、筆者は大きなコーヒーカップを作り、湿った粘土に親指を押し当てて、彼女だけの印を残しました。「仕事をするのはすべて炎。どうなるかは誰にもわからない。それがこの焼き物の美しさであり、面白さなんです」と前田さんは語ります。

前田さんとともに淡路伊賀焼のワークショップで大きなコーヒーカップを作る筆者

しかし、一般的な陶芸教室とは異なり、作品はすぐには完成しません。作られた器は2月の窯焚きを待ち、冷ました後の4月に発送されます。料金は15,000円ですが、大きな作品の場合は使用する土の量によって価格が変わる場合があります。枠に限りがあるため、事前の予約をお勧めします。

前田さんとの淡路伊賀焼ワークショップで筆者が作った大きなコーヒーカップ。

このユニークな体験は、不完全さの美しさと、プロセスにおける忍耐の大切さを教えてくれます。最終的な出来栄えは、自然、粘土、炎、そして偶然によって決まるのです。

鶴来窯–手割りの赤松が焚かれるのを待つ6連房の登り窯。

鶴来窯は、めまぐるしい日常から離れ、静かに立ち止まる時間を与えてくれます。スピードが重んじられる現代において、この場所はゆっくりと時間をかけることの大切さを思い出させてくれるでしょう。一つの作品が完成するまでに数ヶ月を要するという事実は、芸術も人生も、時間をかけて育まれるものだということを優しく気づかせてくれます。

歴史的な窯から現代のクラフトへ:Awabiware

年に一度のダイナミックな炎の世界である古伊賀焼とは対照的に、もう一つの陶芸が静かに息づいています。それが、東京での活動を経て淡路島に戻った陶芸家、岡本純一氏の手によって生まれた「」です。彼の作品は、淡路の伝統的な職人技と現代的なシンプルさを融合させています。「Awabiware」という名前は、淡路島の美しさから着想を得た「Awabi」と、彼が作る器を意味する「ware」とを組み合わせたものです。

Awabiwareの店内に並ぶ器–日本の伝統的な陶器

彼の工房は、田んぼや川に囲まれた大町地区のかつて診療所だった建物を改装したものです。棚に並ぶボウルや皿、マグカップの上を陽の光が滑らかに撫でていき、一つひとつが柔らかな質感を持ち、心安らぐ色合いをしています。Awabiwareの器は、儀式的な工芸品というよりも、日々の暮らしに寄り添うパートナーのような存在です。

車や、英語を話すガイド付きの現地ツアーで気軽に訪れることができ、ギャラリーショップ(営業時間10:00~17:00)では、伝統が現代的なデザインと出会う様子を見ることができます。

岡本氏の作品は、「受け継ぐ器」という精神に根差しています。彼は、器とは長く使われ、美しく歳を重ね、人々の記憶を宿すべきものだと考えています。

淡路島で19世紀に栄えた珉平焼にインスピレーションを受け、岡本氏と彼のチームは、時代を超えながらも新しい感覚の作品を生み出しています。粘土、水、そして火が、彼らの手を島の土地と歴史に結びつけています。

Awabiwareのメンバーが器に釉薬をかけている様子–日本の伝統的な陶器

Awabiwareの美学は、穏やかで洗練されています。安定感がありながらも軽く、柔らかな色彩、すっきりとした線、そしてマットな質感が特徴です。湯呑みやカレー皿、花の形をしたお皿といった日常の品々には、古伊賀焼に見られるような丁寧な手仕事の精神が、現代の生活に合わせて再構築され、息づいています。

古伊賀焼とAwabiwareの両方を体験することは、まるで同じ島が持つ二つの声を聞くようです。一つは伝統的で土の温もりを感じさせる声、もう一つは洗練された現代的な声。そうした側面が相まって、淡路島の工芸文化が、その土地や受け継がれてきたものと深く結びつきながらも、いかに進化し続けているかが見えてきます。

Awabiwareのギャラリーショップ–最新の器が並ぶ

淡路島で食す:島の恵みと器の出会い

淡路島では、陶芸は工房の中だけのものではありません。特に食卓において、日々の暮らしの一部となっています。

島の西海岸に位置する古民家風の宿兼レストラン「」は、工芸と食を見事に融合させています。2024年4月にリニューアルオープンしたこの店は完全予約制。で、朝夕の膳を味わうこともできます。そこは、食材と器、そして物語が静かに響き合う場所なのです。

海里の食事の一部–地元の食材を使い、淡路島の器に盛り付けられる

オーナーシェフの岡野満氏は、一流店で腕を磨いた後、「淡路島の食材そのものの魅力を最大限に引き出す」というシンプルかつ深遠なビジョンを胸に淡路島へ戻りました。海里の料理は、一皿一皿に島の季節が映し出されています。料理はお任せコースのみで、内容は季節や入荷状況によって変わります。例えば獲れたてのカンパチ、鹿の内臓を使った醤、マリーゴールドやニラの蕾といった鮮やかなあしらい。そして、食事の主軸となるのは有機栽培米や伝統的な田舎寿司(ばら寿司)で、それらはしばしばAwabiwareの皿や瓦の上に盛り付けられます。

海里のオーナーシェフ、岡野満氏。地元の旬の食材を使った料理は淡路焼の器に盛り付けて提供される。

食事は、改装された古民家の中にある炭火の囲炉裏を囲んで提供され、そこでは時間が自然とゆっくり流れるように感じられます。

淡路焼の器に盛られた、ファーム・トゥ・テーブル(農園から食卓へ)を体現するナスの料理–地元の食材と日本の伝統的な陶器の共演。

一皿一皿、器の一つひとつ、そして丁寧なもてなしが、食事客を淡路島の土壌と工芸の伝統へとつなげます。オーナーは英語とフランス語も話し、国内外からのゲストを本物の温かさで迎えてくれます。

海里の席に着き、庭の柔らかな光を楽しむ筆者

緑の丘と柔らかな光に囲まれた海里は、単なる食事の場所ではありません。淡路島そのものの温かさを感じられる場所です。そこにいる人々の優しさ、庭の静けさ、そして細部にまで行き届いた心遣いは、食事が終わった後も長く心に残る、まるで故郷に帰ってきたかのような安らぎを感じさせてくれます。

淡路島を体験する–工芸、食、そして暮らしが交わる場所

淡路島の魅力は、美しい海や渦潮、そして豊かな海産物だけにとどまりません。そこは、陶芸と日々の暮らし、そして食がひとつに溶け合う場所なのです。年に一度、炎が力強く舞う古伊賀の窯焚きから、Awabiwareの飾らない美しさまで。山で静かに眠る土から、「海里」で味わう大地の恵みまで。この島は、その奥深い物語を、ゆっくりと、そして誠実に語りかけてくれます。

Awabiwareの工房からの眺め–夕暮れ時、田んぼの手入れをする人

淡路島へのアクセスガイド

淡路島は大阪と神戸のどちらからでも簡単にアクセスできます。新神戸駅や三宮駅から高速バスに乗れば、島の中心的な町である洲本まで約1時間半で到着します。車の場合は、明石海峡大橋を渡るルートから瀬戸内海の息をのむような景色が広がり、旅の始まりを彩ってくれるでしょう。

島に着いたら、洲本バスセンターから各地へ移動できます。特に郊外のエリアや陶芸工房へ行くには、レンタカーを利用するのが最も便利です。

鶴来窯での陶芸ワークショップでコーヒーカップを作る様子

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